呉服業界ではなく、私木寺はこれまでアパレルメーカーに勤めておりました。アパレルメーカー時代、「現地現物」を大事にし、イタリア、中国、日本の毛織物の産地を実際に回ってきました。今回もそれと同じく、きもの産地を見たいと思い、いろいろな方のご助力があり、着物の大産地である新潟の機屋や染屋を訪問し、普通見れない着物生地の生産現場をこの6月中旬、二泊三日の日程で見て参りました。
*視察移動中、JR飯山線車内より撮った写真。米の産地としても有名ですね。田んぼが広っています。新潟は、今回訪れた小千谷、十日町、塩沢の着物のほかに、燕三条が有名で、着物にとらわれない物造りが盛んな場所と言えます。歴史的な背景であるほかに、今回の視察で感じたのは、新潟の厳しい気候条件が物造りを発展させた要因であると思います。厳しい気候条件とは、言わずもがな「豪雪地帯が多いこと」です。今回訪れた塩沢紬の産地「塩沢」では、毎年11月から雪が降り始め、5月中旬まで残雪があるようです。つまり、一年の約半分が雪の中の生活になるのです。最大積雪は3メートルにも及び、報道で写真をご覧になったことのある方は多いのではないかと思います。
*塩沢の名士・鈴木牧之の書いた江戸後期のベストセラー「北越雪譜」の一節。着物生地の生産は、アパレルいわゆる洋服に使われる生地の生産と違い、機械によるオートメーションがしずらく、今もなお細かい手の作業が多いです。新潟の着物生地のクオリティーの高さは、豪雪という気候条件の悪い中、生まれ育った新潟人の忍耐という県民性だからこそできる生地なのだということが、今回の視察を通して分かりました。
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小千谷縮・小千谷紬の「小千谷」を訪れる・
十日町紬・明石縮の「十日町」を訪れる・
塩沢紬・本塩沢・夏塩沢の「塩沢」を訪れる・
小千谷縮を学生服のシャツ・ブラウスに。産地の夢。産地ごとの報告については、上記に掲げたページに書きました。是非、ご覧ください。同じ新潟でも、それぞれに特徴あります。今回に限らず、新潟の着物産地には、何度か訪れ(それこそ冬にも)、今後も、より一層その魅力をお伝えできればと思っております。(文/木寺)
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